2015年に入って新会期が始まるやいやな、アリゾナ州選出のマッケイン上院議員(共和党)がキーストーンXLパイプライン法案(S.1)に修正案としてジョーンズ・アクト廃止条項を提案したという報道がありました。マッケイン上院議員は大統領候補にもなったベテラン議員のため、「ジョーンズ・アクト廃止の政治的な動きが出た??!」かのようにとられる向きがありましたが、アメリカの海事関係者なら「ご老体が、またまたご無理なことをいわれておられるようだ」というようなももでしょうか。
マッケイン議員は長年のジョーンズアクト廃止派で、機会があるごとに「廃止!」とさわいでいます。彼はアリゾナ州選出で海事産業を膝元にかかえていないことにご留意下さい。(荷主産業はジョーンズ・アクト廃止派です。)
ジョーンズ・アクト廃止論が出るたびに、海事産業を膝元にかかえる議員、海事産業ロビー団体がこれに反論します。海事産業ロビー団体であるAmerican Maritime Partnershipは間髪を入れずマッケイン修正案が米国の艦船建造基盤を根こそぎにし、国家安全保障を弱体化するものであるとする反対声明を発表しました。1月20日には32人の下院議員が超党派で上院幹部にマッケイン提案を「見当違い」と非難する書簡を送っています。
現在議会はジョーンズアクトの行政上の適用強化を求める方向に向かっており、ジョーンズ・アクト廃止は予見可能な限りの将来においてありえない、というのが識者の見方です。
これまでも、ジョーンズ・アクトを緩和する方向に修正する法案は何度も提出されましたが、いずれも、「米国雇用の保全」と「国家安全保障」をかざす反撃に打ち勝つことはできていません。
ジョーンズ・アクトは米国の聖域
ジョーンズ・アクトによる海運コスト高が米国の経済競争力に大きな影響を及ぼし、市場を歪曲していることは明らかなのですが、米国政府は貿易協定でこれを死守する構えです。例えばNAFTAでも米国はジョーンズ・アクトを例外とすることを求め、これを達成しています。WTO協議でもこれまで米国政府はジョーンズ・アクトを聖域の中の聖域として守り抜く姿勢を示してきています。
このような背景から、ジョーンズ・アクトについては特定の案件にあわせて暫定的に条件を修正することはあっても、根本的な廃止は考えにくいでしょう。